「宋家の三姉妹」'97香・日
監督:メイベル・チャン
出演:マギー・チャン、ミシェル・ヨー、ヴィヴィアン・ウー
女性監督による細やかな描写が際立つ演出で、波乱の人生を送った三姉妹の姿を追った大河ドラマです。清王朝の終焉以降の中国、革命が相次ぐ激動の中を力強く生きた宋家の三姉妹。こんなに聡明で美しくて力一杯生きた姉妹が実在していたなんて驚きです・・・ この三姉妹が実に教養があって美しくて、また波乱に満ちた人生なんですよ! 中国近代史のちょっとした勉強にもなります。この時代の歴史を詳しく知らなくても、テンポの良い展開で脚本も良くわかりやすいです。また日本の音楽家、喜太郎さんが参加した映画音楽も素晴らしいです。哀愁漂う旋律のテーマ曲は必聴です。以後個性豊かな三姉妹それぞれの人生、感想を書いていきたいと思います。
一人は富を愛し、一人は権力を愛し、一人は祖国を愛した・・・
《長女・宋靄齢(あいれい)/ミシェル・ヨー》
ミシェル・ヨーと言えば、華麗なアクションで名高いマレーシア出身の国際派女優。『007』シリーズの最新作『トゥモロー・ネバー・ダイ』への出演で、ハリウッド進出も果たしています。この映画ではアクションは一切見られませんが、その美しさと聡明さを余すところなく活かした演技で魅了してくれます。中国初の銀行家となった資産家と結婚し、政治の世界に飛び込んでいく二人の妹達を見守るような位置付けとなっています。
《次女・宋慶齢(けいれい)/マギー・チャン》
2004年カンヌ国際映画祭で主演女優賞を獲得したマギー・チャン。話題作『HERO』や『2046』にも出演、旬の演技派女優として輝いていますね。この映画の事実上のヒロインは次女・慶齢で、彼女の人生と心理描写を中心にストーリーは展開していきます。1911年辛亥革命により中華民国が成立。総統になった孫文を追って、慶齢は日本に渡り二人は結婚します。孫文亡き後も、次第に弾圧されていく中国共産党を擁護し、孫文の遺志を頑なに守っていく凛々しい姿に胸を打たれます。映画の中で「男達は革命に命を捧げ、女は愛を失っていく。それが革命・・・」「革命とは愛である、愛もまた革命である・・・」という言葉が出てきます。この重厚な言葉は、まさに慶齢の人生そのものを表していると感じました。
《三女・宋美齢(びれい)/ヴィヴィアン・ウー》
孫文の軍事顧問で、士官学校の校長となった軍人・蒋介石と結婚した三女の美齢。孫文の死後、国民党党首となった蒋介石は外交よりも共産党弾圧を優先し、次第に次女・慶齢と三女・美齢は対立せざるをえなくなります。この二人の葛藤の様子は静かながらも見ごたえのある描写で、二人が立場の違いに苦悩しながらも、姉妹の絆を大切にしようとする気持ちがひしひしと伝わってきます。満州事変や清安事件を経て、蒋介石は共産党との統一戦線を受諾、内戦を停止し、日本軍の侵略に抵抗していきます。そんな戦争のさなか、この三姉妹が政治的に活躍する様子が力強く描かれています。
《好きなシーン》
次女・慶齢(共産党派)と蒋介石(国民党)が対立する中、長女と三女はその関係修復に苦悩します。長女ファミリーと三女ファミリー(蒋介石も含む)と次女・慶齢が一緒に食事をするシーンがあって、そこで思想の違いから三姉妹が言い争いを始めます。次第にその言い争いは英語となり・・・ 思わず英語で口げんかをしてしまう三姉妹。同席していた蒋介石は英語が理解できない為、三姉妹は自分達だけしかわからない言葉で、思う存分言いたいことを言いたかったのです。もちろん蒋介石は激怒しますが・・・(苦笑) この三姉妹は教育熱心な父親の影響で、子供の頃からアメリカ留学を経験し、当時のあらゆる最先端の教養を身につけます。このシーンを見て、教育や教養というものは人間にとって最高の財産だと確信しました。
《中国近代史 ~ナポレオン曰く「中国が動けば世界が動く」~》
こちらでは中国近代史の略歴を記しておきます。映画の参考に。
1911年 辛亥革命により中華民国成立。総統となった孫文は日本に渡る。日本で宋慶齢と結婚。その後袁世凱に任を譲る。
1922年 袁世凱死後、孫文は広東に革命政府を置く。孫文の軍事顧問・蒋介石は孫文の命令で士官学校を造り校長となる。
1924年 北京で孫文死去。その後蒋介石は共産主義者を弾圧。次女・慶齢は国民党を脱退しソ連へ渡る。三女・美麗が蒋介石と結婚。
1931年 満州事変。蒋介石は外交よりも共産党弾圧を優先。日本軍の侵略を許す。
1936年 清安事件。蒋介石が誘拐される。周恩来を動かして蒋介石を説得し、その甲斐あって蒋介石は共産党との統一戦線を受諾。内戦停止。
1937年 日中戦争が盧溝橋で開戦。
1945年 第二次世界大戦、日本降伏。中国本土では内戦が再開。共産党の勝利。毛沢東により中華人民共和国建国。
1949年 蒋介石は台湾へと逃れる。蒋介石と妻の美麗は、その後中国本土の土を再び踏むことは無かった。
《フィギュアスケート・ファンのためのおまけ》
ペアの申雪&趙宏博(中国)が今シーズンのフリー演技で、この映画の曲を使用しています。映画を見ると、彼らの演技に対する理解度が深まるような気がします。私の感覚では、きっと彼らの演技は次女・慶齢と孫文の愛と革命を表現しているのかな~と想像してみたり。哀愁漂う旋律が流れると、映画の三姉妹が思い浮かんで泣けてきてしまうほどです。